監督: ジョセフ・フォン・スタンバーグ
脚本: ダニエル・N・ルービン ジョセフ・フォン・スタンバーグ
製作年:1931 製作国:アメリカ 配給:
ジャンル: ドラマ
キャスト: マレーネ・ディートリッヒ ヴィクター・マクラグレン グスタフ・フォン・セイファーティッツ
主人公の女スパイX27は恐れない。一瞬の驚きやショックを見せることがあっても、それが恐れに変わって存在を支配してしまうことはない。一瞬はっと目を大きくして驚くだけ。すぐに表情からは驚きが消え、彼女はリラックスする。そして魅惑の微笑が浮かび、自信とスタイルが現れる。それは最後まで揺るがない。恐れない彼女の姿は、恐れがどんなものかを教えてくれる。ディートリッヒいわく、恐れは「致命的な負け」。
黒い目隠しで、「まったくもう」という調子で若い兵士の涙をぬぐってやる主人公は、最後まで恐れず、スタイルを失わず、優しい母性的な微笑みをうっすらと浮かべて、数秒後に訪れる結末、生と死をじっと見つめている。
『モロッコ』のように衝撃的なラストシーンは、ゴヤの絵『マドリード1808年5月3日』を引用してマネが描いた『皇帝マクシミリアンの処刑』に似ている。