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シネマ歌舞伎 『連獅子/らくだ』
製作年:2008  製作国:日本  配給:松竹
ジャンル:歌舞伎
キャスト:中村勘三郎 坂東三津五郎 中村勘太郎 中村七之助

『らくだ』は落語を芝居にしたものらしく、言葉も現代的で分かりやすくて、何度も大笑いしてしまった。親子三人の『連獅子』は、三人の髪の動きがぴたりと合っていた。毛振りの前、狂言師の時の勘三郎の踊りを見て、視線、黒目の動き、まばたきも芝居の道具になるのだと知った。勘三郎の凄さは、伝統や努力だけではなくて、持って生まれた何かがあると思った。優れた絵や彫刻など芸術を見ている時、言葉にはできない感覚やセンセーションといったものが体の中に生まれることがあるけれど、『連獅子』の狂言師を演じる勘三郎達を見ていても、それと同じような感覚があった。
# by mirabili | 2009-01-03 23:47 | ★★★★
ザ・ローリング・ストーンズ シャイン・ア・ライト
監督:マーティン・スコセッシ
製作年:2008  製作国:アメリカ&イギリス  配給:
ジャンル:ライブ/ドキュメンタリー
キャスト:ミック・ジャガー キース・リチャーズ チャーリー・ワッツ ロニー・ウッド 

"I CAN'T GET NO SATISFACTION!"
年齢は関係ない。60歳なのにすごいとかではない。何歳であっても、あれだけのステージをやったらすごい。この映画に出てくる昔のミック・ジャガーのインタビューで、インタビュアーは、彼らはギャラ以上のパフォーマンスを見せていると言っていた。それは重要なことだと思った。
# by mirabili | 2009-01-01 23:28 | ★★★★
2008年のベストムービー
ダークナイト
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:クリストファー・ノーラン&ジョナサン・ノーラン
製作年:2008  製作国:アメリカ  配給:ワーナーブラザーズ
ジャンル:コミック/ファンタジー
キャスト:クリスチャン・ベール ヒース・レジャー ゲイリー・オールドマン

2008年に見た映画で一番面白かったのは『ダークナイト』だった。この映画を見て、現代でも一流の映画を作る人達がいるんだと知った。映画の筋がよく出来ていて、映像がダイナミックで、俳優陣が素晴らしかっただけではなく、この映画が作られた時代が、『ダークナイト』というファンタジーの世界に反映されていた。映画の最後にクリスチャン・ベールがボイスオーバーで言う「人々には物語が必要だ/People need more than reality」からは、この映画を作った人達の、それが映画が生まれた時から変わっていない映画の重要な使命の一つなのだという覚悟が感じられた。
私は、この映画を見るまで同じ映画を二回映画館に見に行くということをしたことがなかったけれど、『ダークナイト』は生まれて初めて映画館に二回見に行った。二回見て、二回とも映画のクレジットが完全に終わるまで席から動けなかった。
『ダークナイト』の他にヒース・レジャーが出演している作品を見たことがないけれど、ジョーカー役のヒース・レジャーはすごかった。『ダークナイト』では、彼はジョーカー以外の何者でもなく、ヒース・レジャーの欠片もなかった。完全にジョーカーだった。冒頭のシーンでも、後頭部と肩と後姿だけで、この人が何らかの重要な役柄を演じるのだろうと感じさせる存在感があった。丸い背中、上目遣い、歩き方、話し方、声がジョーカーだった。今後、彼の成長を見られないのは、知ることのできない損失なのだろう。ヒース・レジャーが生まれてきて、自分の能力を最大限に使って素晴らしい演技を見せてくれたことに感謝したい。自分と同じ年に生まれた人が、こんなにすごい仕事をしたことに驚嘆と尊敬の念を覚える。
# by mirabili | 2008-12-31 23:59 | ★★★★★
大脱走
監督:ジョン・スタージェス
脚本:ジェームズ・クラヴェル&W・R・バーネット
製作年:1963  製作国:アメリカ  配給:MGM&UA
ジャンル:ドラマ
キャスト:スティーブ・マックイーン ジェームズ・ガーナー チャールズ・ブロンソン

革ジャンを着てバイクにまたがり、野球のグラブで遊ぶスティーブ・マックイーンは、若くて自由で魅力的な、当時のアメリカの象徴のようだった。
# by mirabili | 2008-12-31 19:15 | ★★★★
ワールド・オブ・ライズ
監督:リドリー・スコット
脚本:ウィリアム・モナハン
製作年:2008  製作国:アメリカ  配給:ワーナーブラザーズ
ジャンル:ドラマ
キャスト:レオナルド・ディカプリオ ラッセル・クロウ マーク・ストロング

映画の最初の方で主人公が危機に陥ると、「アメリカは世界一強くて無敵だから、きっとアメリカ軍が助けてくれる」と思ってスクリーンを見ている自分に気付いた。こんな時代に。けれど、それは監督がそう演出しているからそう思うのだ。アメリカは強くて近未来的なテクノロジーを持っていて彼らに不可能はないと。もちろん、こんな時代に皮肉でもジョークでもないプロ・アメリカ映画を作るような映画監督はいないので、この映画はそうは終わらない。最後の方で、主人公が再びピンチに陥ると、映画の最初と同じように「アメリカ軍が助けてくれる…?」と少しは淡い期待を持つけれど、最初に思ったようにはアメリカの強さを信じられなくなっている。そして、主人公は一向にピンチから救われる気配がなく、「もしかして、映画まで、現代ではアメリカはもう無敵ではないし、ハリウッド映画のスターはいつだってピンチから逃れる、なんて時代ではないってこと? どうすればいいの?!」とパニックを起こしそうな、悲壮な気持ちになってしまった。その後、主人公は救われるのか、もし救われるとしたらそれはアメリカによってなのか。そして、映画のタイトルにある「嘘」。嘘を使う者の作戦は成功するか失敗するか。嘘を使っているのはどちら側か。

リドリー・スコットと彼の弟トニー・スコットの映画は、大抵の場合、最初の数分間に刺激的なシーンを挿入することで、冒頭から観客の注目を掴む。漫才で言えば「つかみ」が上手い。その冒頭で掴んだ観客の心は、いつもは最後まで放さないのだけれど、前作の『アメリカン・ギャングスター』を見た時には、冒頭では一旦心を掴まれたけれど、途中から放されてしまったので、リドリー・スコットはもう映画を撮るには年なんだろうかと思い、「この人が出ていたら/この人が作ったらその映画は絶対見るリスト」からリドリー・スコットがいなくなってしまうのでは、と恐れていたけれど、『ワールド・オブ・ライズ』でその恐れは一掃された。『エイリアン』のようなSF映画でも、リドリー・スコットは何らかの社会的/政治的コメントを入れてきた。彼はハリウッド的なエンターテイメント映画を作るけれど、非常に政治的な態度も持っている。
# by mirabili | 2008-12-29 23:06 | ★★★★